『消費税25%で世界一幸せな国 デンマークの暮らし』

消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし  角川SSC新書 (角川SSC新書)消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし 角川SSC新書 (角川SSC新書)
(2010/11/10)
ケンジ・ステファン・スズキ

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 大学の友人が勧めてくれた本。「消費税25%」という数字と「デンマーク」という国名から、ピンとくる方もいらっしゃると思いますが、本書はデンマークを事例に「大きな政府」の実態について紹介したもの。デンマークのみならず、フィンランドやスウェーデンなどの北欧(北ヨーロッパ)は「ゆりかごから墓場まで」と例えられるほどの高福祉国家として有名。

 本書の著者であるケンジ・ステファン・スズキさんは1967年にデンマークへ留学。それ以降30年間に渡ってデンマークに住み続けている方です(デンマーク国籍も取得済み)。


 本書では、デンマークの高福祉国家について、
  第1章:高福祉社会(「幸せ」を感じさせる様々な社会保障制度の中内)
  第2章:高負担の実情(高福祉実現・維持のためにどのようなことをしているのか)
  第3章:問題点と共生社会(高福祉社会でも解決できない社会問題)
  第4章:デンマーク史概略(高福祉社会の実現に至るまでの歴史的背景)
 の4つの章ごとに分けて書かれています。

 「そんなに福祉が充実しているのなら、どんなものか興味あるぞ!」と思う方もいらっしゃると思うので、本書の内容についていくつか紹介します。

 デンマークでは学校教育にかかる教育費はすべて無料。小・中・高と進級していく過程で、進路をどうするか考えたうえで、どの学校へ進学して何を学ぶのか決めます。日本とは違い、偏差値重視などの受験戦争もなく、職業訓練学校のように将来の仕事に直結する勉強を受けることが出来ます。日本に比べて卒業することはとても難しいですが、社会人入学も自由にでき、卒業後の就職・転職の再チャレンジの機会が人々にもたらされています。

 医療制度も無料(ただし、歯科治療は自己負担)。国民一人一人に「家庭医」が付いており、体に異常がある場合、大病院に診てもらわなくても彼らの診断を仰いでもらい、入院するか否かを決めてもらえる。また、他国(ヨーロッパ圏)へ滞在中に病気になっても医療サービスを無料で受けられる「健康保険カード」が行政から配布されます。

 上記のような高福祉社会が実現できる理由として、「端に税金が高い」だけではないことが述べられています。個人登録番号制度による全国民の把握と、行政による徹底した無駄のない仕事管理・法制度などによるものといいます。

 しかし、そんなデンマークでも解決できない社会問題が起きているといいます。日本よりも高い離婚率。離婚したことで訪れる孤独感による自殺。能力主義に基づく仕事の成果で、差が出る所得格差。また高福祉社会特有の「大事が起きない限り、普段から納税している健常者には恩恵がない」という問題もあります。日本では「大きな政府」の良い面ばかりが強調されることが多いので、こうした事実があることを知って欲しい…。


 総評としては、良い本でした。「○○すべきだ!」といった主張や提案などが書かれた本ではなく、あくまでデンマークを通して「大きな政府」の実態を紹介した内容。デンマークの生活や社会保障に興味がある方、「大きな政府」の下での社会が具体的にどんなものか気になる方にはちょうど良い本。

 最後に著者から、日本に向けた社会問題解決のアドバイスを1つ。

 1億人以上の大所帯をかかえる日本が、デンマークと同じことはできないでしょうし、またする必要もないと思います。国が持っている多くのアドバンテージを生かしさえすれば、デンマーク以上に幸せな国づくりができると確信できるからです。


 著者は日本とデンマークを比べた時に、人口の多さが両国の大きな差を生み出す要因になっていると説きます(日本:約1億2000万人、デンマーク:約500万人)。「高福祉・高負担」の社会が構築できたのは、人口の少なさが関与しているのは間違いないとします(この見解は、私も自身の記事で賛同しています)。この発言から、多くの人が日本の人口問題を根本から、あらためて考えてくれるといいです。



Wikipedia「ケンジ・ステファン・スズキ」


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