『アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~』

アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~ [DVD]アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~ [DVD]
(2010/04/14)
アンヴィル

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 2009年に放映されたドキュメンタリー映画。橘玲さんの『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』で取り上げられていたので、興味がわいてツタヤで借りて観ました。


 アンヴィルはカナダ出身のへヴィメタル・バンドで、多くのロックスターが世に出るようになった1980年代に彼らも名乗りを挙げた。1980年代に彼らは隆盛を極めたが、それは長続きしなかった。

 彼らは人気がなくなってもなお、起死回生のためにバンドを続けている。30年の月日が経ち、メンバーの中心核であるボーカル兼ギターのリップスとドラムのロブは50歳を迎え、体力も落ちて、アーティストとしての素質も厳しくなっていた。

 リップスは学校給食の配送センターで、ロブ建設作業員として働いている。彼らは自慢のロックで食うことが出来ず、違う仕事をして生活している。

 ロックの仕事として、ヨーロッパツアーの参加依頼が舞い込み喜んでいくも、道に迷ってクラブへの到着が遅れたり、演奏したギャラを支払わないクラブのオーナーと取っ組み合いになったり、1万人収容できるコンサート会場で観客がたったの174人など、さんざんな結果となった。ちなみにこのツアーでのギャラもなく、彼らは一文無しになった。

 彼らは新曲発売のためにレコード会を渡り歩き、売り込みをする。しかし、ほとんどが相手にしてもらえず、新曲は発表できないままでいる。隆盛期の頃のマネージャーにコンタクトを取り、新曲を認めてもらい販売を決行するも、「(販売のための)資金がない!」という問題が起きた。資金集めのために新しい仕事を掛け持ちするもうまくいかず、最終的には家族から出資してもらうことになった。

 リップスとロブは50歳を過ぎて、妻子も持ち、ローンでマイホームを購入し、家族からのなけなしの運営資金を提供してもらいながらも、ロックを続けている。ロックが好き好きでたまらない彼らは、起死回生を目指して、これからもロックを続けていく。


 この映画を見終えた感想としては、とても素晴らしい映画だと感じた。というのも私は作中にある彼らの家族愛や夢を追いかける実直な姿に感動したのではなく、「夢を追い続けていくことがどういうことなのか」を現実的に教えてくれたことにある。

 巷には、数あるほどの成功体験談がある。マイケル・ジャクソンやレディーガガのようにスーパースターとして脚光を浴びる人がいる一方、彼らのようになれなかった大勢の人々が背景にいる。

 「そんなの誰でも分かってるよ」と笑う方もいらっしゃると思うが、これはビジネスやギャンブル、政治的・教育的な物事についても同じだ。宝くじなどのギャンブルで一攫千金を得られた人の背景には、それを得られず掛け金をスッてしまった人が大勢いる。ビジネスで莫大な利益を出した経営者や企業の背景には、赤字になったり倒産したりした企業が背景にある。

 そうした事実を伝えずに「やればできる」「夢はかなう」といった自己啓発や抽象的な概念は、人々に希望を与えるが、その大半は成就できずに退場していく。アンヴィルの彼らは退場していないものの、ロックスターになる夢をあきらめずに活動している。

 橘玲さんはボーカルのリップスが夢をあきらめない本当の理由を語っている。

 映画の冒頭で、リップスが廃食サービス会社に出勤する様子が描かれていた。衛星棒をかぶって1日じゅうチキンのから揚げやハンバーグを容器に詰め込むのは、これ以上ないくらい退屈で単調な作業だ。もし夢を諦めてしまえば、リップスに残されたのはこのマックジョブ(低賃金、待遇劣悪、マニュアルに沿うだけの単調で将来性のない仕事の総称)だけなのだ。
  <・・・中略・・・>
 グローバルな能力主義の世界では、夢をあきらめてしまえば、マックジョブの退屈な毎日が待っているだけだ。だからリップスには、夢をあきらめることが許されない。死ぬまでロックしつづける以外に生きる術がないからこそ、滑稽なまでに必至なれるのだ。
 <橘玲『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』より>


 総評としてはオススメできる映画。ぜひ見てみてください。


『アンヴィル!~夢を諦めきれない男たち~』公式サイト


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