『経営者・平清盛の失敗』

経営者・平清盛の失敗 会計士が書いた歴史と経済の教科書経営者・平清盛の失敗 会計士が書いた歴史と経済の教科書
(2011/12/16)
山田 真哉

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 ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者である公認会計士の山田真哉さんが書いた本です。2011年12月に出版されたばかりです。副題は「会計士が書いた歴史と経済の教科書」。『目のつけどころ』同様、私の父が彼からもらったものです。

 著者である山田真哉さんは文学部で日本史学を専攻し、その研究者になろうとした方でもある方です。その経験から、本書で語られている歴史には小・中・高学校の日本史では教えてくれない、さまざまな学術的事実・見解が述べられています。

 山田真哉さん曰く、平清盛は経営者(経済人)としてかなり優秀で、合理性や先見性に秀でた人物だといいます。また「他の歴史上の人物で言うと、坂本竜馬に近い」とされ、両者とも「海と船が大好きで、経済に強い武士である」だと、彼は言います。

 純粋に歴史が好きな方ならご存知かもしれませんが、歴史に名を残す人物は「戦で功を上げる人物」よりも「政治・経済面で大きな影響力を与えた人物」の方が名を残しています。三国志で名高い諸葛亮も政治の能力は抜群でしたが、戦は下手だったといわれています。本書で取り扱われる平家一門も「武士として戦が上手かった、うんぬん」ではなく「政治的・経済的にどうだったのか」について、書かれています。

 本書では、その平清盛と平家一門に焦点を当て、
  「平家はなぜ滅亡したのか?」
  「平清盛の「失敗」とは、なんだったのか?」
 について、経済学的観点から平家滅亡の謎(歴史ミステリー)を解き明かしていていきます。


 本書の内容について、いくつか紹介します(すべて書いてしまうと、ミステリーとして面白くないので)。

 本書ではまず、平家一門が巨万な富を得たという日宋貿易の真相について解き明かしています。当時の日本は、中国大陸の「宋」と貿易をしていましたが、一口に貿易といっても、海難事故などのリスクが高く、そう簡単に儲けられるものではありませんでした。また、貿易を仕切っていたのは宋の商人で、輸出・海運・輸入のすべとを仕切っていました。そんな貿易情勢の中で、清盛の父である平忠盛は貿易で儲けられるカラクリを生み出し、清盛は父に負けず劣らずの貿易革命をやってのけた、といいます。

 次に宋銭普及のミステリーについて解き明かしています。これは日本経済史上、最大のミステリーといわれています。なぜかというと、「絹・米を交換手段とする物々交換経済が、たったの10年で貨幣経済へと変わった」という驚きの事実があるからです。当時の日本では物々交換が取引の手段であり、貨幣は流通していませんでした(大和朝廷の頃に造られた和同開珎や富本銭は900年代に途絶えています)。そんな中で清盛は宋銭を数多く輸入し、日本の物々交換経済を貨幣経済に変えるまでに至りました。日本国内の円をドルに変えるのと同じくらい難しい通貨普及をわずか10年で変えてしまったのはなぜか。山田真哉さんは、平家滅亡の真相がこの宋銭普及にあるとして、ミステリーを徐々に解き明かしていきます。


 読み終えた感想ですが、大変素晴らしい本でした。山田真哉さんの本は本書を含め、まだ3冊しか読んでいませんが、これまで私が読んだ彼の本の中でも最高傑作だと感じました。分かりやすい論説と飽きることのない数々の史実。そして、彼が解き明かしていく歴史の真実には驚きの連続でした。

 歴史というと、近年の歴史ブームのように「現代風のイケメンが戦場を駆け巡り、華々しく戦功を勝ち取る」といったものが多いように感じます(最近テレビ放送された大河ドラマ『平清盛』でも、ハリウッド映画ばりのアクションシーンが目立ちました)。この手の話題には政治・経済面でその人物が行った所業というのがあまり描かれていません。個人的には、そうした経済的・合理的な面に特化した話題の方が好きなので、本書の内容には大変満足できました。

 歴史が好きな方にはぜひオススメ。「歴史に触れながら、経済にも触れてみたい」という方にもオススメです。


『経営者・平清盛の失敗』 著者のサイン
↑上手く撮影できませんでしたが、本書にある山田真哉さんの直筆のサイン。


公認会計士 山田真哉工房


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