『選択の自由』

選択の自由―自立社会への挑戦 (日経ビジネス人文庫)選択の自由―自立社会への挑戦 (日経ビジネス人文庫)
(2002/06)
Rose Friedman、 他

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 マクロ経済学者のミルトン・フリードマンと、彼の妻であるローズ・フリードマンの共著。副題は「自立社会への挑戦」。社会思想についての話を聴いてくれた従兄弟が、本書を勧めてくれました。従兄弟が持っている文庫版を借りて読みました。

 本書は1980年に日本経済新聞社が刊行したものを、2002年に文庫版(日経ビジネス人文庫)として再刊されたものです。


 ミルトン・フリードマンは自由主義の立場から、政治・社会・経済の在り方や改善を主張していた経済学者です。彼が唱える自由は新自由主義(ネオリベラリズム)であり、「国家(政府)が市場に介入することを極力抑え、民間業者や人々の自由な取り決めや活動を容認・活性化すれば、経済や社会が効率よく機能する」という主張・思想から、小さな政府や市場に対する規制緩和などを強く主張していました。彼は新自由主義者の代表的存在でもあり、リバタリアニズム(自由原理主義)の理論にも通じるところがとても多いです。

 日本で新自由主義というと、小泉政権下での社会情勢から、「弱者切り捨て」や「強者から弱者への搾取」といった冷酷極まりない主義として、多くの日本人からもの凄く嫌われています。しかし、橘玲さんは「彼は弱者切り捨てを主張したのではなく、大きな政府による福祉国家は非効率的で持続不可能だと指摘した」だけだといいます。実際、彼は本書の中で「自由」だけでなく、社会における「平等」の在り方についても説いています。

 本書の内容については、以下の章立てになっています。

第1章 市場の威力
第2章 統制という暴政
第3章 大恐慌の真の原因
第4章 ゆりかごから墓場まで
第5章 何のための平等か
第6章 学校教育制度の退廃
第7章 消費者を守るものは誰か
第8章 労働者を守るものは誰か
第9章 インフレに対する治療
第10章 流れは変わり始めた



 内容は全体的に、アメリカの繁栄の歴史などを事例に、アダム・スミスの「見えざる手」で主張された人々の自由で自発的な活動や取り決めが、いかに経済・社会を発展させてきたのに効果的なのかについて述べています。また政府の在り方や役割についても述べられています。フリードマン自身、アダム・スミスの影響を強く出ているので、彼の論文の引用が多く出てきます。

 本書の中で個人的にインパクトが大きく感じたのが、「第2章 統制という暴政」のところ。国際貿易を事例とした、「統制」という国家による市場の介入が者気・経済の発展にあまり良い影響を与えなかったことを解説しています。また、この章では統制と自由の関係についても述べており、自由の本質についても述べています

 ここで述べられている自由とは経済的自由であり、その本質は「選択する自由」「使用する自由」「財産を私有できる自由」の3つだといいます。フリードマンは「経済的自由を制限すれば、言論の自由とか報道の自由とかいった分野まで含めて、自由一般に対して影響がでてくることが避けられない」と主張していました。さらに詳しい主張が以下の通り。

 自由はひとつの全体であり、われわれの生活の一部に関する自由を削減するどんなことでも、われわれの生活のその他の面における自由に影響を与える可能性が大きいことを示しているのだ。
(中略)
 それにしても、われわれはすでに危機ラインを越えてあまりにも多くの自由を制限するようになってきてしまっている。今日、緊急に必要なことは、自由に対する制限を排除していくことであって、もはやこれを増大することではない。



 昨今の社会情勢からみても、まさにその通りでしょう。自由化を抑えて規制や制限を強化してしまうと、つまらない不自由な社会になるのは目に見えています。

 「第5章 何のための平等か」では、平等の根本的な理論や、自由と平等の関係(バランス)について述べています。ここでもインパクトの大きい主張が以下の文。

 自由市場の運営を許されていない社会はどの社会でも、富裕な人と貧困な人との格差が拡大していき、富裕な人はいっそう富裕となり、貧困な人はより貧困となってきている。



 多くの人々はグローバル化や市場の規制緩和など、「資本主義社会(市場原理)の拡大によって格差が拡大した」と考えていますが、それは大きな誤解だといいます。資本主義社会(市場原理)の拡大によって豊かな生活を享受でき、社会主義などの自由な市場がない社会の方が格差がより拡大していったとフリードマンは主張していたのです。

 「結果の平等」という意味における平等を自由よりも強調する社会は、最終的には平等も達成することなしに終わってしまう。
 (中略)
 他方、自由を第一にする社会は、その幸運な副産物として、より大きな自由とより大きな平等との両方を達成することになるだろう。より大きな平等は、自由によってもたらされる副産物ではあるが、けっして偶然の産物ではない。
 (中略)
 自由とは、多様性だけではなくて、社会的移動性をも意味するのだ。



 平等を優先した社会は、ソ連の崩壊やドイツの統合などからも明らかなように、結果的には上手くいきませんでした。自由を優先した社会では、平等もあり、結果的に人々にとって豊かな社会を実現することができました。

しかし、日本を含め現在の先進諸国は様々な社会問題をかかえ足掻いている状態ではあります。今後さらなる自由な社会を実現していく必要があるでしょう。


 読み終えた感想ですが、「素晴らしい!」と叫びたくなるほどの内容でした。「自由」を求めている私にとって、本書の内容は読んでいて納得・共感できる内容ばかり。経済の規制緩和はもちろん、学校教育の民営化や関税の撤廃、労働者を苦しめる最低賃金法や労働組合の廃止のなど、橘玲さんをはじめとするリバタリアニズムの主張や思想とマッチするところが多いです。

 不道徳な経済学でも述べられていましたが、リバタリアニズムと新自由主義はマッチすることが多く、本書を読んでみるとそのことがより納得できました。

 ちなみに、フリードマンは本書でセーフティネットの在り方・問題については「負の所得税」の導入を主張していました(詳しくはWikipediaで)。「これはこれで良いかな…」と思うのですが、橘玲さんが主張するように所得税自体「個人のプライバシーと財産権を侵害している」ので、正直微妙です。国家による個人の自由を侵害しているところがある以上、私は負の所得税よりも、ダイレクトに国民に配るベーシックインカムの方が効果的なのではないかと考えています(財源は消費税か特殊な通貨を利用すればよいかと)。


 総評としては、経済期学の本としては絶対に外せない本。「オススメ!」と言いたいところですが、厚さが3cmもあるので読書に慣れていない方には、読む前から戸惑ってしまうかもしれません(私も最初は驚き、読めるかどうか不安でした)。

 本書を読む前に、まずは橘玲さんの『不道徳な経済学』を読んで予習するとちょうどいいと思います。本書の内容と『不道徳な経済学』には、理論や主張に被ることが多いので、より理解が深まりやすくなります。

 本書は実用書というよりも専門書ではありますが、それほど難しい専門用語はあまりなく、理論もあらかじめ理解しておけば難なく読めます(ただアメリカ独自の法律など、諸外国独自の法律や歴史などが出てきます)。

 新自由主義や自由経済社会の理論に興味がある方、それらを学びたい方にぜひオススメ。経済学の参考書と今後も持っておきたい1冊です。


Wikipedia「ミルトン・フリードマン」


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