ベーシックインカムで改善できない問題

 過去の記事にて何度か書いてきたが、私はベーシックインカムをほぼ全面的に賛成している。日本を含め、世界の先進諸国やこれから発展していく国々にとっても、これほど個人の自由を保障・拡大化し、なおかつ社会にとってより良い影響を与えるシステムはない、と考えているからだ。

 とはいえ、ベーシックインカムを考えるにあたって、避けられない問題はいくつかある。今回はその中でも「たとえベーシックインカムを導入しても、改善できない現代社会の問題」について、まとめていく。ベーシックインカムを導入しても改善できない(または完全な改善が難しい)問題は、残念ながらある。

 ベーシックインカムは現行の年金制度や生活保護制度と比べて、日本の社会問題を解決できる社会システムとして、ホリエモンこと堀江貴文さんや山崎元さんといった著名な方々や、現在の日本社会に疑問を持つ人々(特に若い人々)から支持を受けているものの、万能ではないのだ。

 では、どのような問題が改善できないのか。考えるといろいろ出てくるのだが、その中でも私が特に考えているものを挙げていく。


1.自殺者の問題

 日本では1997年以降、毎年3万人の方が自殺で亡くなっている。1997年は山一証券や日本長銀が破たんし、バブル崩壊後の日本経済の不況が更に悪化していった。

 橘玲さんも指摘しているが、日本での自殺の要因として、経済的な理由があることが容易に目に見えている。ベーシックインカムを導入し、必要最低限の生活が保障されれば、経済的な理由で自殺を図る人々を救うことは大いに可能だ。

 しかし、自殺者が減ったとしても、自殺そのものがなくなることは残念ながら決してない。失恋の苦や、病による苦など、経済的な理由以外での自殺もあるからだ。

 ベーシックインカムではないが、『消費税25%で世界一幸せな国 デンマークの暮らし』の著者でデンマーク在住のケンジ・ステファン・スズキさんは、高福祉社会であるデンマークでも自殺は社会的に問題になっていると指摘している。

 「高福祉社会にもかかわらず、自殺が社会的に問題だなんて、そんな馬鹿な!」と驚く方もいらっしゃると思うが、デンマークでも病気を苦にした自殺や経済的な理由な自殺、孤独を苦にした自殺があるという。たとえ高福祉の社会でも、「万人が幸せになれないのが現実」だという。これはベーシックインカムを導入しても全面的に解決出来るわけではない。


2.就職の問題

 ベーシックインカムの導入すれば、必要最低限の保障の金額は支給されるので、橘玲さんや城繁幸さんが指摘している解雇規制(差別的な正社員保護)はいらなくなる。無用な正社員保護がなくなれば、雇用の流動化が促進され、労働者にとっても企業にとっても、自由な働き方(雇用)やワークライフバランスが可能となる。

 だが、その雇用の流動化によって、万人が就職出来るわけではない。残念ながら、その情勢についていくことができない労働者が出てきてしまう可能性も大いにあるからだ。これは職業訓練や自己啓発で解決できる問題でもない。

 解雇規制や終身雇用・年功序列で守られてきた公務員は真っ先に解雇される(残ることができたとしても、かつてのような安定した雇用ではないので、労働は厳しくなる)。公務員に限らず、民間企業でもかつて異常に人員整理が行われ、欧米諸国並みに転職・解雇が活発になるだろう。

 そこで解雇された人々がまた新たに職に就けるかどうかは、もう個人次第となる。必要最低限の保障としてベーシックインカムは支給されているものの、彼らの中にはマイホームや教育費などでローンという重荷を背負っている者もいる。ベーシックインカムだけではローン返済は難しく、給料が減額されるのは生活そのものが苦しくなるのは必定だ。何とか会社にしがみつこうとするも、もう時すでに遅しだ。

 高度経済成長期に描かれた人並みの生活(妻子やマイホームを持ち、安定した職業で昇給・出世を目指す)は、ベーシックインカムでは実現できない。あくまで必要最低限の個人の生活の保障であって、それ以上の生活は個人の労力次第だ。

 若い人々やかつての日本社会を善しとしない人々のように、「正社員に囚われない生き方」や「新しい価値観のライフスタイル」を持った生き方をする人々もいるだろう。ただ、それを善しとしない人々もいるだろう。彼らは自分たちがかつて勤めていた既得権の雇用を正義として掲げるだろうが、ベーシックインカムなどを批判するだろうが、もうその言葉に耳を貸す人はもはやほぼいないだろう。


3.コミュニティの問題

 昨今「昔に比べて、人と人とのつながりが薄くなった」と巷では叫ばれているが、孤独やコミュニティの希薄化の問題は別に今に始まったことではない。

 ベーシックインカムでは個人の自由を保障する。自由な社会の中で「俺は死ぬまで、誰とも関わりたくない!」という人がいても、それは本当に個人の自由なのだから、誰も否定できない。

 コミュニティを円滑にするためのボランティア事業などはあるが、そのコミュニティが活性化するには参加者と主催者の労力次第になる。「コミュニティの希薄化が犯罪を引き起こす!」と批判される方もいるが、たとえ誰かとつながりを持っていたとしても、それが精神的な支えになるとは限らない。


 以上が私が考えるベーシックインカムを導入しても改善できない現代社会の問題である。他にいくつか考えられるが、現在の日本社会と照らし合わせて、一番しっくりくるものを挙げた。

 今回は解決策などの建設的な意見は書いていない。そうした意見はいくらか世に出ていると思うが、私はいかんせん考えがまとまらない。他の改善できない問題も含めて、建設的な意見も書けるようにしておきたい。



スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する