『貧乏人の逆襲! 増補版』

貧乏人の逆襲!増補版: タダで生きる方法 (ちくま文庫)貧乏人の逆襲!増補版: タダで生きる方法 (ちくま文庫)
(2011/12/07)
松本 哉

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 ニートであるphaさんの著書『ニートの歩き方』で紹介されていた本。副題は「タダで生きる方法」。本書は「増補版」であり、2008年に出版されたオリジナル版に、新たに文章を追加して文庫化したもの。興味が湧いたのでさっそく買って読んでみました。


 本書の著者は、東京都杉並区高円寺でリサイクルショップ「素人の乱 5号店」を経営する松本哉さん。松本さんは学生時代から、さまざまな活動(主にデモ)を行っており、現在もお店を経営する傍ら、何かしらの活動を主催・企画しています。彼の具体的な活動については後ほど書いていきますが、かなり異色の経歴の持ち主です。

 本書は、松本さんの経験や考え方をもとに、現代社会のネガティブな事象(「出世できない」などの勝てない競争など)に振り回されずに、いざという時に自力でなんとかやっていける「貧乏人のサバイバル術」について、具体的に書かれています。

このサバイバル術ですが、具体的で分かりやすく、面白おかしいものもあって、けっこう驚きます。必要最低限の生活に欠かせない衣食住の確保や、社会的・経済的に不利な自分たちにできる活動やコミュニティ形成、すでに何かしらの活動を行っている団体や人々の紹介など。

 例えば衣食住の確保の場合、少しでも節約したい時の「家賃の値下げ交渉術」や「ヒッチハイクのやり方」、さらには「野宿のやり方」も書いてあります。どれも一長一短があり、「コレが一番いい!」という完璧なものはあまりありませんが、興味深いものばかり。

 松本さんがこれまで行ってきた活動についても書かれており、主にデモ活動が中心になっています。学生時代は、大学の経営方針の抗議から大学校舎に居座って飲んで騒いだりして、活動を行ったとか。大学卒業後も、原発反対デモなどの活動を行い、駅前を占拠するほどの数千人が参加した大規模なデモから、わずか3人しか参加しなかった「3人デモ」など、かなりハチャメチャな活動ばかりです。


 読み終えた感想ですが、面白いと感じるところは多いものの、賛同しかねるところも多く、微妙でした。「勝てない競争に参加するのはやめて、自分たちで勝手にやろう!」「自分たちでできることやって、もっと自由に面白おかしく生きよう!」という考えには賛成です。

 ですが、賛成できないものもありまして、一つは食い逃げや無賃乗車など、明らかに違法なこと(犯罪)も紹介されていること。いくら貧乏で金なしとはいえ、違法なことをやってしまうのは無謀すぎる。ここまで一線を越えてしまうのは、どんな人でも擁護できない…(誤解しないように書いておくと、松本さんは犯罪を勧めているわけではなく、あくまで方法の1つとして紹介しているだけです)。

 もう一つは「貧乏人は善で、金持ちは悪」という考え方に基づいた主張が多いところ。松本さんが行っているデモ活動などでは、「金持ちは俺たち貧乏人にもっと気前良くしろ!」といった明らかな金持ちバッシングが多いです。また、活動の内容も抗議対象の場所で鍋パーティやったり、DJを呼んで音楽をガンガン鳴らすなど、傍から見ると「面白おかしくはあるけど、意味あるのか?」と思わざるを得ない単なるドンチャン騒ぎと化している気がします。

 遊民さんのブログサイト『高等遊民の備忘録』で、本書のオリジナル版が紹介されています。遊民さんは上記の事柄について、金持ちや大企業を敵視する貧乏人特有の歪んだ感情である「ルサンチマン(主に強者に対しての、弱い者の憤りや怨恨、憎悪、非難の感情)」が原因だと述べています。

端的に表現すれば、「貧乏人は弱者だから、強者である金持ちからは金を毟り取ってもかまわない」という思想が根底にあり、本書に出てくる彼の行動のすべてがそれに基づいているように見えてしまいます。

自由に生きることを願う人が、自分が敵とみなした相手の自由は認めないなんて、これほど矛盾した考え方はないと思います。



 私は過去にこちらの記事で、「貧乏人は善で、金持ちは悪」という構図では何も解決できないと書きました。結局金持ちバッシングは、相手の自由を奪う行為ですから、その当事者が自由を願うなど、原理的におかしなことです。凡人の私が言うのもなんですが、松本さんもそのことに気づいたら、自身の主張にもっと輝きが出るかもしれない。


 とりあえず、「お金をかけずに何かやる!」という具体的なノウハウが多いので、それらを知りたい方にはオススメ。犯罪などの一線を超すノウハウについては自己責任で!


素人の乱(公式サイト)


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