『キャピタリズム マネーは踊る』

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(2010/05/26)
マイケル・ムーア

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 マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画。今回は「反資本主義」について取り上げており、資本主義社会にはびこる格差や人権問題などについて、メッタメッタに批判しています。


 資本主義社会で皆が得られると信じていた豊かな生活と社会。しかし、長引く不況と利益アップのためのコスト削減・リストラ、企業と政府の癒着による格差拡大など。現在アメリカ社会で起きているこれらの問題を、資本主義社会が原因とし、「資本主義社会は悪だ!」と本作で主張しています。

 本作で問題の被害を受けている人々(弱者)に、ローン返済ができなくなってマイホーム(土地含む)を銀行に差し押さえられた家庭、バイトや生活保護の収入も合わせないとまともに生活できないほどの低賃金のパイロット、何の通告もなしにリストラされた大手自動車工場勤務の従業員などが登場します。

 ムーア監督が取り上げた問題の被害を訴えたシーンの内容が半端ない。マイホームの差し押さえに銀行の担当者と警官がセットで来て、立ち退きを拒否して居座る住人に対し、ドアをこじ開けてドカドカ入って来て、立ち退きを通告。自社の従業員に何の通告もなく、生命保険をかけ、彼らが死んだら保険金を容赦なく受け取る企業(これをやっているのが、なんと誰もが知っている超大手企業!)。

 さらに企業と政治との癒着の問題では、ムーア監督十八番のブッシュ大統領批判が炸裂。財政担当に金融会社の元CEOが就き、不況で投入されたはずの税金が労働者ではなく、銀行再建だけに投入されて終わるなど、政府に対する不満も語られています(挙句のはてには、彼らを犯罪者呼ばわりするほど…)。ムーア監督は、「我々の税金は、彼らの私腹を肥やすのに使われた」と批判。

 こうした批判の中で、ムーア監督は改善案として、経済や国家に資本主義ではなく、民主主義の概念を取り入れることを強く主張しています。一部の者による富の独占ではなく、万民への富の公平な分配を。競争による勝ち負けではなく、個人を尊重した意志の反映を目指すべきだと。

 具体的な事例として、民主主義の概念を取り入れた経営をする企業が紹介されています。その企業では、経営方針を決める際に全社員との議論や多数決で決定され、給料も全社員で公平に分配しているとのこと。


 観終えた感想ですが、正直全面的に賛成できるとは思えませんでした。

 反資本主義を訴えるムーア監督の考えは理解できます。先進諸国において、資本主義社会の在り方にガタがきているのは周知の通り。私も、企業による独占的な経営や、経営者の独善的・偽善的と言わんばかりの振る舞いには、正直腹立たしさを感じます。

 しかし、だからといって、彼の解決案が「民主主義の概念を取り入れる」というのは、いくらなんでも安直過ぎる。

 多くの先進諸国は、少なからず資本主義社会の良い影響を受けています。巷にあふれている魅力的な商品やサービスはまさにそうです。

 また、企業や国家の運営については、「分業」によって各々の役割を任された日々との行動や判断によって、上手く組織的に動いています。それを、先ほどの民主主義的な企業経営に取り換えてしまうには、いくらなんでも限界があります。中小・零細規模の企業ならば何とかできると思いますが、従業員が何百人もいるような大企業となると、一人一人の意見なんて聴いてられない。運営を円滑にするために、責任を持ってそれぞれの役割を行う。経営者もそのうちの一人です。

 それと、本作で取り上げられている弱者についても疑問。

 本作のシーンの一つに、差し押さえを受けた住人達が集まって、コミュニティを形成し、差し押さえ住宅に勝手に住みこむシーンがあります。銀行の担当者や警察官らが、彼らを追い出そうと警告しに来ますが、住人達が抵抗。「人の家を奪いやがって!」「おまえらには心がないのか!」といった類の人道的・道徳的なバッシングを叫び、銀行の担当者や警察官らを追い払います。

 ですが、このシーンを含め、「労働者が正義!」というシーン・主張にはあまり納得がいきません。こちらの記事でも書きましたが、これでは単なる金持ちバッシングだけで収束してしまっているように思えてなりません。

 反資本主義を訴えるのならば、企業や国家だけでなく、労働者(個人・大衆自身)自身も、どのように振る舞うか、行動するのかを考えるべきでしょう。そう考えると、高村友也さんの『スモールハウス』に書かれていることは、かなり参考になると思います。


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