『ベーシック・インカム入門』

ベーシック・インカム入門 (光文社新書)ベーシック・インカム入門 (光文社新書)
(2009/02/17)
山森亮

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 日野瑛太郎さんのブログサイト『脱社畜ブログ』や著書『脱社畜の働き方』で紹介されていた本。副題は「無条件給付の基本所得を考える」。

 以前からベーシックインカムを支持している私ですが、ベーシックインカムの概要や情報について、いつもネットに記載されている情報から調べていました。以前から、「読書を通しても、ベーシックインカムについて詳しく知りたい」と思っていたので、上記の紹介文を読んでさっそく買いました。


 同志社大学の経済学部教員である山森亮さんが、ベーシックインカムの概要や歴史、注目度、問題、疑問などをさまざまな観点から書いています。山森さん自身、ベーシックインカムについては賛成の意志があり、それに伴った説明や紹介などを記しています。

 ベーシックインカムと言えば、当ブログでも度々取り上げていますが、「政府が全国民に無条件で、必要最低限の生活を送れるだけでの保障金を支給する制度」のこと。ベーシックインカムの概要については、当ブログや他サイトでも何度も紹介・説明されているので、ここでは省略。本書の特徴のみをさらりと紹介します。

 ベーシックインカムは、様々な呼び名や形がありながらも、似たような構想や実施がこれまでの歴史の中であったといいます。イギリスのスピーナムランド法、イタリアの女性の育児に対する賃金支払い運動、カナダの社会クレジット運動など、さまざま。専門家や学者の間ではミルトンフリードマンの「負の所得税」など、ベーシックインカムに近い構想があり、それらの構想についても本書で解説し、ベーシックインカムとの相違点や類似点も述べています。

 本書では、そうしたベーシックインカムにまつわる歴史や事象について述べているだけでなく、「ベーシックインカムの財源は?」「人が働くなるのでは?」といった身近な疑問に対する回答や、現在のベーシックインカムが世界でどのように注目されているかの動向についても書かれています。

 また、本書の最初の方では、日本や世界における現行の社会保障制度の問題点も指摘します。特に日本の生活保護は「セーフティネット」としての機能を果たしておらず、「自立支援」も上手く機能していないとのこと。この辺りはそのほかの先進諸国でも同様で、本書ではそうした問題から現行制度への反発が世界各地で起こっていることを紹介しています。

 経済の歴史、多くの専門家・学者らの意見を取り上げて、現行の社会はすでにベーシックインカムの導入が必要であることの重要性を説いており、それは日本においても例外ではないとしています。


 読み終えた感想ですが、タイトル通り、まさに入門書としてふさわしい本でした。

 ベーシックインカムの概要や歴史、注目度、問題、疑問などの説明は具体的に書かれており、注釈や参考資料の引用もしっかりあって、各項目について深く解説しています。

 「人が働くなるのでは?」という問いに対しては、一つのチャプター使ってまで詳しく書いており、ベーシックインカムを導入しても起こるであろう、フリーライダー問題や労働インセンティブ(費用と便益を比較する人々の意思決定や行動を変化させるような誘因)についての疑問についても取り上げ、解説しています

 とはいえ、本書でも物足りないところもあります。それは日本でのベーシックインカム導入における影響や疑問についての解説があまり書かれなかったところ。日本におけるベーシックインカムの世間の認知や導入活動がどれくらいあるかについても、具体的なことが書かれていませんでした。これが書かれていたら、日本でのベーシックインカムの認識や導入も、より身近なものになっていたと思います。

 とりあえず、読書を通じてベーシックインカムを深く知りたい方にオススメです。ベーシックインカムの他にも、福祉の理念や経済学の理論などもちょろっと解説されているので、それらについてもついでに学べて一石二鳥です。


山森亮研究室


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