『まんがで読破 蟹工船』

蟹工船 (まんがで読破)蟹工船 (まんがで読破)
(2007/10/01)
小林 多喜二、バラエティアートワークス 他

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 読書のカテゴリではありますが、今回は漫画の紹介。

 『蟹工船』といえば、プロレタリア(個人主義的な文学を否定し、社会主義思想や共産主義思想と結びついた文学)作家である小林多喜二の小説。本書はそれを分かりやすく漫画で内容を描いたもの。たまたまブックオフにて105円で売られていたもので、興味が湧いたので購入して読んでみました。


 内容についてサラリと紹介。有名な文学作品なので、御存じの方も多いはず。

 本書で登場し舞台となる「蟹工船」とは、オンボロの漁船兼工場という特殊な船。沿岸で獲った蟹を船内で缶詰に加工するというもの。

 働く作業員たちはドヤ街などから集められた最下層にいる人々で、皆貧困に苦しむ人々ばかり。そうした彼らを雇う資本家側の人間は、人を人と思わない外道な輩で、「おまえら人間じゃねえ!」と言いたくなるほどの金の亡者。日露戦争の最中で、戦争に向かう兵士たちの食料として蟹の缶詰が輸出された恩恵で、資本家は「ボロイ商売」と言わんばかりのボロ儲けを企みます。

 作業監督者の「使う者と使われる者が対等なワケがねェだろ」という言葉通りに、企業側の人間は徹底的に労働者を酷使していきます。嵐が来ようが、労働者に病人が出ようが、徹底的に痛めつけて労働させます。その結果、作業監督者によるリンチが起きたり、死者が出たり、救難信号が出ている難破船を見捨てたり(!)と、目を覆いたくなるような過酷なことを次々とやってのけます。

 本書は労働基準法などの労働者保護が現在ほどいきとどいていなかった戦前(近代)の日本社会に労働の過酷さを描いており、当時労働者を守ろうと動き出していた社会主義・共産主義への転換主張・憧憬も描かれています。当時の日本の労働社会は本当に劣悪で、資本主義への反発として、社会主義・共産主義運動も活発に行われていました(そのパイオニアは、当時生まれて間もなかった旧ソビエト連邦時代のロシアでした)。

 本書で印象的だったのは、過酷な労働に対する反発と、社会主義・共産主義の労働者を思いやる熱意から労働者たちが最後にストライキを起こし、成功するところです。血を見るような殴り合いが起きるも、成功しました。1度目は失敗するも、2度目は成功し、労働環境や待遇の要求が通りました(散々悪事を働いてきた作業監督感はクビになり、「ちくしょうダマされた」と叫んだらしい、と描かれています)。

 本書の最後のページでは、以下の言葉が書かれています。

「組織」「闘争」――…
この偉大な経験が僕たちに残された――…

皮肉にもそれを
教えてくれたのは
資本家側だったのだ

この一篇は
「植民地における資本主義進入史」
の一頁である



 労働者はストライキを起こしましたが、資本家は会社に損失を被っただけでした。資本家に血を見るような暴力(鉄拳制裁)は起こさず、「僕らが働くなったら、あなた(資本家)は困りますよ。それでもいいの?」という一致団結の労使交渉で、ストライキを勝ち取りました。

 資本家を一方的に攻撃するのではなく、「自分たちの労働の強みを活かして、相手をひるまらせる」という交渉でストライキを成功させたのは、幕末の江戸城無血開城のように血を見ない穏やかな解決方法だと思いました。


 読み終えた感想ですが、とても素晴らしい内容でした。

 過酷な労働に反発し、自分たちの要求を求めて声をあげる労働者たちの姿は、まさに勇姿でした。私は社会主義・共産主義の賛成者ではありませんが、資本主義社会に問題点があるという主張や考えには、私も賛成する点があるので、本書を読んでいると胸が熱くなります。『コールオブディーティシリーズ』に登場するソ連のキャラクターであるレズノフの掛け声「Ураааа(ウラーーーーッ)!!」を叫びたくなるほど。

 また漫画としての本書の画も素晴らしく、すさまじい画力を感じます。漫画だからこそ、本書に描かれている過酷さがうまく表現されています。

 現代の日本社会でも「ブラック企業」などによる労働問題は、未だに絶えません。本書を通して、労働とは何か、一致団結とは何か、といった働く理由・反抗する理由というのを、私たちはもう一度問い直すべきではないでしょうか。

 オススメの一冊。労働者だろうと経営者だろうと、現代社会を生きる人々にぜひ読んでもらいたいです。


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