橘玲さんのベーシックインカムに対する私の意見(1)

 以前、私は自分のブログにて、橘玲さんのベーシックインカムに対しての意見を書いた。

それでもベーシックインカムに反対できない(1)
それでもベーシックインカムに反対できない(2)
それでもベーシックインカムに反対できない(3)

 橘玲さんはベーシックインカムについて、反対の意見を述べている。そうした中で、橘玲さんは自身の公式サイトで、ベーシックインカムに対する更なる反対意見や見解を書いている。

橘玲公式サイト「素晴らしきベーカムの未来」
橘玲公式サイト「「素晴らしきベーカムの未来」の追記」

 以前から上記の記事を読んだ際、私は橘玲さんの反対意見について、ずっと大きな疑問を抱いてきた。反対意見そのものを非難するつもりは毛頭ない。だが、橘玲さんの意見は個人的に疑問を感じざるを得ないくらい、反対意見としては粗末さや物足りなさを感じる文章だった。

 単に反対意見だけで粗末さや物足りなさを感じるのではない。橘玲さんがこれまで述べてきた主義主張や考え方や価値観と照らし合わせると、彼の反対意見にどうしても矛盾を感じてしまうのだ。

 私のような凡人が書く文章で矛盾を感じているのならば、単なる「よくあるネットの書きこみ」として相手にされないだろう。しかし、橘玲さんはプロの作家(モノ書き)だ。プロである以上、彼が述べてきた主義主張と、今回述べているベーシックインカムの物事に矛盾を感じてしまうのは、彼のプロとしての信頼に大きく関わる。

 私は橘玲さんを尊敬し、彼の本を何冊も何度も読んできた。だからこそ、今回の反対意見の粗末さや物足りなさからくる矛盾には、どうしてもその疑問を拭いきれないのだ。

 今回は橘玲さんのベーシックインカムの反対意見について、疑問に感じたことをもとに私なりの意見や見解を述べていく。なお、私は橘玲さんがベーシックインカムを反対しているからといって、彼を無暗に卑下したり敬愛の念を捨てたりといったことをするつもりはないことを、読者の方はご了承いただきたい。


 では本題に入ろう。まずは「素晴らしきベーカムの未来」についての、意見や見解を述べていく。

 橘玲さんは前者の記事で、日本でベーシックインカムを導入するのは財源の問題から荒唐無稽な話だとして、「そんなことができるわけがない……」として真っ先に取り上げている。ベーシックインカムの財源については、これだけでいくつもの記事を書けてしまうので、ここでは取り上げないことを明記しておく。

仮に、日本にベーシックインカムが導入できたとしても、下記の3つのことが確実に起きると橘玲さんは述べている。

1.強制労働
2.超監視社会
3.鎖国



 まず強制労働だが、これは財源となる税金を納めてくれる納税者を納得させるために、「健康なのに働かない者」を働かせる“正義”だという。ここで言う正義とは「国家がすべての国民の生活最低保障をするのは正義だ」という、国家による納税者を納得させるための正義だ。

 この正義を貫くためには、働かない自由を認めずに、働かせることを強制させないと筋が通らない。そのために強制労働が起きるという。

 超監視社会では、以下のように述べている。

また、誰でも気づくように、ベーカムでは所得をより少なく申告することで収入を最大化できる。300万円の所得のひとはほんとうなら50万円の税金を納め なければならないが、所得を200万円に減らして申告すれば納税はなくなるし、所得ゼロなら100万円を受け取れる。このようにベーカムは、税金をごまか したいという強い誘引を納税者に与える。



 上記の内容では、ベーシックインカムは就労インセンティブを下げ、不正受給を更に呼ぶということになる。そうした事態を避けるべく、社会が監視社会になるというもの。

 鎖国については、貧困にあえぐ外国からの移民がベーシックインカムを求めて、移住してくるという問題から、日本はそれを防ぐべく“鎖国”になるという話だ。

世界では、10億人を超えるひとたちが1日1ドル(80円)以下で暮らしている。そんなグローバル世界で、「日本国民なら誰でも年間100万円(1 日あたりおよそ34ドル)が支給される」ベーカムが実施されたとしよう。このとき世界の貧しいひとたちにとって、日本国籍を取得するか、それが無理なら日 本国民となる子どもをできるだけたくさん持つことが、貧困から脱出する魔法の杖になる。

じつはこれは、法律上はものすごく簡単だ。日本の国籍法は血統主義だから、日本国民の父親か母親を持つ子どもは無条件で日本国民になれる。貧しい国の女性たちは、日本人男性との間に子どもをもうけるだけでベーカムの恩恵を受けることができるのだ。

そうなれば、日本人男性との偽装結婚ばかりか、セックスすらも闇市場で売買されるようになるだろう。これは想像するだにおぞましい世界だが、ベーカムの持つとてつもない魅力を考えれば、世界じゅうの貧しい女性たちが貧しい日本人男性に殺到するのは避けられない。

この道徳的退廃を解決する方法は、日本国民の男性と女性のあいだに生まれた子どものみを「日本人」とする純血主義しかない。これによってベーカムの支給範囲は限定できるが、同時に、外国人の父親か母親を持つ子どもは「非日本人」として差別されることになる。もちろん移民が日本国籍を取得することなど まったく不可能になるだろう。



 いずれの話も橘玲さんはベーシックインカムを導入することは、日本にとって更なるネガティブな事象をもたらすという風に述べている。

 しかし、橘玲さんの主張には、大きく指摘しておきたいことがある。それは「現行の社会制度を引き継いだままでのベーシックインカムをやる」という点だ。

 先ほど出た強制労働への正義だが、そこには「働かない自由」を認めていない記述が一切書かれていない。本来ベーシックインカムは働かない生活も認めたうえで、人々の自由を保障するものである。もし、ベーシックインカムが導入されても人々を労働から自由になれないというのであれば、はっきり言ってそれはベーシックインカムではない。現行の生活保護と同じであり、本来提唱されている概念に沿っていない。その時点で疑問を提唱する人が必ず出てくるはずだ。

 仮に納税者の税金が何らかの形で還付されるのが“正義”だとされるのであれば、全国人にベーシックインカムを支給している時点ですでにその“正義”は達成されている。自分がベーシックインカムをもらって、そのうえ使い道は自由なのだから、ここで働かない者へのスティグマを敵視することに今さら意味がない。すでに平等にベーシックインカムが支給されるという以上、あとの生活や活動の是非は個人の行動にゆだねられるので、それ以上バッシングされるのはお門違いである。

 「税金を払いたくない」として脱税に走る者ももちろん出てくるだろう。しかし、それはベーシックインカムに限った話ではない。それに、ベーシックインカムはこれまでの税制を大きく変えたうえで、成り立つ制度であることを忘れてはならない。人を脱税に走らせてしまうほどのネガティブな税制ならば、それにNOを突き付け、改善できるように行動できるのが、私たちの立派な務めでもある。「脱税した奴が出たから、他人を監視しよう」ではなく、「脱税するほどの税制ならば、皆が納得できる範囲での税制に改善しよう」という考え方や働きが出てきてもおかしくはない。

 超監視社会においてのベーシックインカムが就労インセンティブを下げ、不正受給を更に呼ぶことも、現行の所得税などの税制度をそのまま用いたらそうなるだろう。しかし、ベーシックインカムは必ずしも現行の制度で行うものではない。むしろ現行制度に問題があるからこそ、それらをより簡素なものに変えてベーシックインカムを導入するのである。

 国家の監視が問題となるが、それはあまりに制度が複雑化し、個人の生活を不自由にするという事態から来ている。ならば制度をより簡略化し、国家が強く介入できないような仕組みを目指せばいい。そうすることでベーシックインカムの計算や受給もしやすくなり、不必要な監視もいらなくなる。

 鎖国の問題だが、これは皮肉にも日本独特のムラ社会(社会構造)が、移民の進入を拒み、自然と彼らを追いやっていくだろう。不法移民が仮にベーシックインカムを受給できたとしても、日本の風土や独自の文化や風習などに耐えきれず、精力的な活動はできなくなることは必須だ。結局、彼らはベーシックインカムを得られたというだけで、それ以上の生活や活動はできなくなってしまうのだ。不法な取得による移民は特別な方措置などを取らなくとも、自然に淘汰される。

 いずれにせよ、現行の社会制度の引き継いでベーシックインカムを実現する方が、荒唐無稽であることが分かる。橘玲さんはそのことに気づいているのだろうか?


つづく


スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する