『里山資本主義』

里山資本主義  日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
(2013/07/10)
藻谷 浩介、NHK広島取材班 他

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 近年出版された新書。副題は「日本経済は「安心の原理」で動く」。

 以前中野・高円寺でお会いしたBさん(仮名)が本書を勧めていて、聞いた話では共生舎の代表である山本さんも賛同していたのだとか。彼の話を聞いて興味が湧いたので、違う日に本屋さんで購入してさっそく読んでみました。


 本書のタイトルにもなっている「里山資本主義」とは何か? 本書では、以下のように記されています。

 「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組み、いわば安心安全のネットワークを、予め用意しておこうという実践だ。



 「里山」とは「人里近くにあって人々の生活と結びついた山・森林(広辞苑より)」のこと。林業による木材の生産や、田畑で農作物生産など、大抵第一次産業に基づいた生活・環境・文化の場でもありました。戦後の高度経済成長以降に都市部の発達に伴って、若者(若い人材・後継者)の流出や少子高齢化などにより、里山はかつての隆盛を失い、地方は寂れてしまったといいます。

 そうした状況を打開すべく、本書では上記の里山資本主義の理念に基づいた事業や活動によって、地域の活性化を図った事例を複数紹介しています。それらの活動や事業に共通していることは、これまでのマネー資本主義(マッチョな経済)による過激であまり幸福を感じ得ない競争主義ではなく、地域の特性や文化を活かし、共有や共存に基づいた穏やかな主義・思想です。

 里山資本主義はこれまでの経済や社会をやみくもに批判しているのではなく、「別の道」とも言える新たな選択肢や可能性を説いたものです。

 ここで、本書に書かれている事例を少し紹介します。

 まずは、日本の中国山地から。岡山県の真庭市では、地元の林業(木材加工)で排出される木くずを再利用した「木質バイオマス発電」の事業を開始しました。これにより発電を地域にある製材所で自家発電でき、原発に頼らない自然エネルギーによる安心安全な電力供給を実現しました。

 それ以外にも、広島県の庄原市ではペール缶で作られた「エコストーブ」で暖房の他、調理の熱供給にも役立てるようにしました。これにより光熱費(燃料代)が従来のストーブよりも大幅に安くなり、燃料となる薪を里山から適度に採取することで、里山の環境改善にも貢献しました。

 里山資本主義に出ている活動では、単に「ビジネスでやっている」という感覚よりも、「皆で楽しみながらやっている」という感覚が、強い印象でした。鳥取県の八頭町のホンモロコという魚を使った工作放棄地の対策を行った事例では、市場拡大による利益獲得が狙いではなく、「元々楽しいからやる」という原点に帰り、活動の考え方や思想を振り返るという出来事もあったといいます。

 「簿外資産の活用による金銭換金できない活動が、見えないところで盛んになって、お金に換金できない幸せを増やす。ついでに、お金で回る経済システム全体の安定性も見えないところで高まっている」




 読み終えた感想ですが、素晴らしい本でした。書いてある事例や里山資本主義の考え方を読むと、共育学舎の考え方に非常によく似ています。共育学舎も、お金に依存しない3K(考える・工夫する・稼がない)の考え方があるので、それを知っていると本書に書かれている事例はとてもイメージしやすい。

 ただ、少々物足りない点も。本書は里山資本主義の主義主張や事例を書いていますが、これから里山資本主義に参加しようする人向けの具体的なハウツーが提言されていると良かった。

 事例や主義主張を読むと「自分もやってみたい!」という気持ちは湧くのですが、いざやろうとすしようにもアイディアや資本がないので、どうにも始められない。せめてそれらを作れるきっかけができるような具体的なハウツーも添えてあると、心強いのですが。

 共育学舎や共生舎のような生活や人生観を好むなら、オススメです。「お金に依存しない生活」という言葉にピンときたら、ぜひ一読を。


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