『フルサトをつくる』

フルサトをつくる: 帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方フルサトをつくる: 帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方
(2014/04/28)
伊藤 洋志、pha 他

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 当ブログの読書のカテゴリもとうとう100になりました。今回、その記念すべき100冊目となる本は、『ナリワイをつくる』でおなじみの伊藤洋志さんと『ニートの歩き方』でおなじみのphaさんの共著である『ナリワイをつくる』です。副題は「帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方」。

 本書については、共育学舎の長期滞在中に「伊藤さんとphaさんが共同で新しい本を執筆している」という話を聞いていました。副題の文章は、伊藤さんがFacebookで公募したそうです。5月7日に出版されるに当たって、phaさんから共育学舎宛てに本書の献本が届きました。三枝さんを始め、皆(多かれ少なかれ)本書を読んでいました。

 私も共育学舎で暇を見つけては本書をパラパラと読んでいましたが、すべての内容は読み切れず…。とはいえ、出る前から「絶対に買おう!」と決めていたので、30日に共育学舎を去って京都に着いた際に、京都駅の本屋さんで購入しました。その後、新幹線の車内や自宅ですべての内容を読み終えました。


 本書は、多拠点居住をベースとしたもう一つの生活拠点である「フルサト」について、伊藤さんとphaさんがそれぞれ述べたもの。「はじめに」の項目で、伊藤さんは以下のように述べています。

 本書はおおざっぱに言うと21世紀の多拠点居住についての考察である。専業ばっかりでもあかんやろ、という前著『ナリワイをつくる』(東京書籍)に引き続き、都会か田舎かという二者択一を超える住まい方を考えたい、という動機で書かれている。

 さらに本書で中心的に記録されているのは、そのなかでも都市に住んでいた人が新たにつくるもう一つの拠点、「フルサト」についてである。ここでフルサトというのは生存条件のハードルが限りなく低いもう一つの拠点である。

 人間が何かにチャレンジができる条件とは、いざとなったら死なない自信であると私は考えている。「背水の陣なんてのは、普段は無理な特殊例だから故事成語になっている」と前作で書いた。21世紀初頭の現在において、楽しくたくましく生きるための重要な作戦の一つは、フルサトをつくることである。フルサトの条件としては、いざとなったらそこに帰れば、心身ともに健やかに生活が送れ、競合他社とか機会損失とかそういう経済用語がさほど通用しない環境があるところである。風の音とか温泉のじわーっと来るかんじとか野菜の旨さとかを体感しながら動物的なペースや感覚で暮らせる場所でもある。



 巷で言われている「0か1か?」というような絶対的な二者択一の思考に対して、本書では「二者択一で絶対視するのではなく、臨機応変に対処しながら、複数の拠点で生活できるライフスタイルを確立すればいい」といった切り口で、フルサトづくりについて述べています。

 フルサトづくりに当たって、本書では下記の具体的な要素について各章ごとに取り上げ、具体的に書いています。各章は、伊藤さんとphaさんが交互に変わりながら、それぞれの文章を書いている構成となっています。

第1章 フルサトの見つけかた(pha)
→フルサトを選ぶ際のポイントについての説明。
第2章 「住む」をつくる(伊藤)
→フルサトの住まい(空き家の探し方や修繕方法)・往来などについて解説。
第3章 「つながり」をつくる(pha)
→フルサトでの人間関係のネットワークについての説明。
第4章 「仕事」をつくる―「頼みごと」をつくる(伊藤)
→フルサトでの仕事づくりについて解説。
第5章 「文化」をつくる(pha)
→フルサトでのイベントや楽しさを生み出すやり方について説明。
第6章 「楽しい」をつくる―「~したい」をつくる(伊藤)
→前章の内容と似ているが、イベントづくりなどをより実践的にできるための具体的解説。
第7章 フルサトの良さ―多拠点居住の意義(pha)
→フルサトの生活についての総合的な考察や認識について説明。



 本書で書かれているフルサトですが、その事例はほとんどが伊藤さん・phaさんにとって馴染みのある熊野に関する事柄。共育学舎の三枝さんの話、NPO法人「山の学校」の柴田さんの九重小学校の話、新宮市議会議員であるてつじいこと並河哲次さんの話、九重小学校でパン屋を運営している林さんの話、などなど。熊野に縁のある方にとっては、「ああ、あの人のことだ!」と実感することばかりです。

 そうした事例を紹介しつつ、フルサトづくりにおける重要なポイントを解説しているので、具体性がしっかりとしていて、分かりやすいです。


 読み終えた感想ですが、大変素晴らしい内容でした。巷にある行政の支援制度や移住・定住の概念とは違った切り口は、どれも共感・理解できるものばかりでした。

 伊藤さんの文章は全体的に、論文のような口調で書かれている解説文みたいな印象。それとは対照的に、phaさんの文章は彼らしいのんびりとした口調で書かれていて、どちらかというとエッセイのような感じでした。この対照的な文章が、本書における理解と親近性を高めているようにも思います。

 ちなみに三枝さんも本書を読みましたが、三枝さんから見ると「目新しい内容は特にない」とのこと。本書で書かれている生活スタイルや価値観は、元々田舎では当たり前のように行われてきたことであり、それを伊藤さんとphaさんが本書を通じて世に広めただけということだそうです。実際に三枝さんは、本書で書かれている事柄(農業や家づくりなど)についてほとんどやってきた経験があるそうです。

 田舎暮らしに興味がある方、共育学舎をはじめとした熊野の活動に興味がある方、多拠点居住をしたいと考えている方に是非オススメです。


 最後に余談ですが、本書に掲載されている写真に私が写っています。プライバシーの関係上、どれかは明かせません(写っていると言っても、ほんの小さくですが…)。とはいえ、自分自身が著名な方の本に載ることができて、大変嬉しく思います。


ナリワイ(公式サイト)

phaの日記


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