『鬼に訊け』

鬼に訊け -宮大工 西岡常一の遺言- [DVD]鬼に訊け -宮大工 西岡常一の遺言- [DVD]
(2012/08/31)
西岡常一、西岡太郎 他

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 前回紹介した『男はつらいよ』と同じ、こちらも共育学舎で観た映画。副題は「宮大工 西岡常一の遺言」。

 本作は法隆寺などの歴史的建造物の修繕などに尽力を注いだ宮大工である西岡常一の生き様や思想について追ったドキュメンタリー映画。三枝さんは西岡常一の生き様や思想に大変興味をお持ちで、本作はわざわざ三枝さんがDVDを購入して、たびたび皆の前で上映していました。


 西岡常一は宮大工の家系に生まれ、厳格な祖父のもとで宮大工の技術や心構えを学んできました。この祖父の教育が彼の人生の根本的な思想や価値観の形成に大きく関わっているといいます。

 本作はまだ西岡が存命していた時期にインタビューした映像を編集し、新たに構築したもの。ちなみに、西岡自身は1995年に亡くなっています。

 西岡常一がする宮大工の仕事は、素材の性質を知るために自分自身で材木を選び、古来の伝統道具を用いて古来独自の技術で建築を行う、というもの。薬師寺再建の際には、それに適した材木を探すべく台湾まで渡り、台湾の山々にある木々を自らの経験と感性をもとに材木を選定しました。また再建工事では建立当時の製法にならうために、現在では廃れてしまった槍鉋などの伝統工具を復活させました。

 そうした伝統的な工法で作業をするため、法隆寺などで行われた再建工事では、工事のやり方で学者たちとかなり対立したといわれています。柱にコンクリートを流し込むことで強度を上げる学者たちのやり方に対し、西岡は素材の性質を知ったうえで現代の工法よりも長期的に耐性を保てる伝統的なやり方を強く主張。単に理論だけではなく、技術や感性、経験などに照らし合わせて、西岡は伝統的なやり方で作業することを貫き通したのです。

 西岡は、伝統技術を継承するための弟子の育成にも力を注ぎました。弟子に対しても厳しく接し、槍鉋などの伝統的工具や工法を使うことにこだわり、現代の工具や工法をあまり用いないやり方を伝授しました。この弟子の方々は、彼の死後もその技術を受け継ぎ、伝統的な工法による宮大工の仕事を現在も続けています。


 観終えた感想ですが、とても興味深い内容でした。基本的に西岡へのインタビューやナレーションによる説明が多く入るのですが、西岡の独特の感性と経験による宮大工の仕事や生き様は、これまで宮大工について知らなかった人でも思わず見入ってしまいます。

 なにより本作を観る三枝さん自身の考え方や価値観に、西岡のそれと通じるところがけっこうあるのが更に興味深いところ。自然の概念を理解したうえで素材選びを行うところや、仕事のない時に農業をやって自然の恵みに感謝するところなど、自然を理解しようとする姿勢は三枝さんと同じです。三枝さんも会話の中で田舎暮らしについて語る際、西岡の考え方や思想を引用して説明をしたりします。そうしたことから、三枝さん自身も西岡常一に何かしらの共感を抱いているのだと思います。

 日本人ならぜひ観ておきたい一作。大工仕事に興味がある方はぜひ。


『鬼に訊け』公式サイト


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