不正受給に関するコメントへの返答(2)

前回の記事はこちら


2.(BIを導入しても)不正受給対策の抜本的解決には至らないのではないでしょうか?

 もちろん私自身BIの導入によって100%完璧に不正受給を防ぎきれるとは考えていない。コメントから察するに、ぐすくまさんは不正受給そのものの根絶を所望しているようだが、私はそこまで考えていない。「それじゃあ無責任だ!」と思われた方もいると思うが、フリーライダー問題の特性上完璧に防ぐことは至難の業だ。ぐすくまさんも仰っているように(フリーライダー問題としての)不正受給問題は、起きてしまうことは致し方の無いことでもある。無理に公権力などで厳罰化しようとすると、かえって社会全体が硬直してしまう。

 それと過去の記事をよく読んでもらいたいのだが、私が今回不正受給者を批判する記事を書いたのは、彼らの「不正受給で金を受け取ること」についてではなく、その一歩先の「(不正受給にあぐらをかいて)でしゃばったり、立場の弱い人に責任(ツケ)を押し付ける」という悪事が許されざる所業だということを言いたかったからだ。単に金を受け取る行為よりも、こちらの悪事の方が何百倍も社会にとっても個人にとっても「百害あって一利なし」の所業である。

 私がBI導入で不正受給問題に対処するのは、「不正受給者が金を受け取ること」に対してではなく、「(不正受給にあぐらをかいて)でしゃばったり、立場の弱い人に責任(ツケ)を押し付ける」という悪事に人々が対等(もしくは優勢)に渡り合えることを想定して述べているからだ。

 前回の記事にも書いたが、金を得ても精力的な活動ができなければ、誰しもろくな行動は起こせない。普段から悪事を働いている不正受給者とそうでない人々の立場が同等となった時、どちらの立場が優勢になるかは一目瞭然である。不正受給者そのものを取り締まることができなくても、彼らの社会的立場を弱くし、精力的な活動ができない状況に追い込んでいけば、不正受給者は自然と消滅していく。


3.(BI導入の行政コスト削減による調査職員減少のせいで)結果として不正受給者は今以上に増えるのではないでしょうか?

 この質問は「公的な規制や取り締まりがないことによる不正受給の増加(悪化)」を気にしているものであろう。BIは導入と引き換えにこれまでの社会保障の大半を廃止し、それに関する事業や制度も廃止する。そうなると、不正受給者の実態を調査するケースワーカーが減るのは当然だろう。そうした状況に乗じてBIの不正受給に乗り出す輩も当然出てくるだろう(ついでに言えば、この質問は2番目の「不正受給対策の抜本的解決には至らないのではないか?」の質問に通じるところでもある)。

 だが、2番目の質問でも答えたように、不正受給で金を得ても精力的な活動ができなかれば、誰しもろくな行動は起こせないうえに、そのストレスから「不正受給できてもこれじゃな…」と言うように自然と辞めることになる。

 それに公権力による不正受給の取り締まりが無くても、地域における人間関係やコミュニティでの関わりから、不正受給者はつまはじきにされるだろう。現在の日本は少子高齢化の影響で、公的制度の手助けが及ばない限界集落や郊外のニュータウンなどで、地域住民のコミュニティによる相互扶助の関係を持つ活動が徐々に強まりつつある。そんななかで不正受給者が従来通りの問題(悪癖)を晒し出したら、自然とつまはじきにされるのは当然だから、不正受給をしていても自然に悪事をしなくなる。

 BIの導入で公権力が及ばないことによる不正受給の懸念はよくわかるが、どんなに制度を高めても公権力では及ばない穴は出てくる。そうした際にその穴を埋めるのは、公権力という大きな力ではなく、身近なところで小回りの効く活動ができるコミュニティなどによる小さな力なのだ。小さな力といっても、活動次第では行政を動かすほどの大きな力を出すことができる。不正受給者とて例外ではないだろう。


 以上が、今回の質問に関する私の返答である。ぐすくまさん以外にも今回の質問に関していろいろ思うことはあると思うが、とりあえず私からの返答は以上である。


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コメント

No title

 大学中退、三重で月に10万稼ぐ21歳フリーターの私が社会保障問題に関心が高いのも、ひとえに自身の不安定な立場によるものです。他人事ではないですから。
 『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』という詩があります。ナチスによるユダヤ人迫害を批判する牧師の詩ですが、不正受給問題を語るときにも当てはまるものだと思っています。
質問に答えていただき、ありがとうございました。

Re: No title

>>ぐすくまさん
コメントありがとうございます。

>大学中退、三重で月に10万稼ぐ21歳フリーターの私が社会保障問題に関心が高いのも、ひとえに自身の不安定な立場によるものです。他人事ではないですから。
hin-bpさんもそうですが、日本において社会的に不利な立場にある人々で社会保障に興味が無い人なんてあまりいないでしょう。
他人事ではないというのは当然ですし、だからこそ知恵を出し合って「社会保障問題をどうするか」を皆向き合っているのですから。
話が変わりますが、ぐすくまさんは三重県の方でしたか。
私は三重県に縁はないのですが、すぐの隣の和歌山県新宮市にあるNPO共育学舎というところでお世話になっていたことがあります。
ぐすくまさんも和歌山県の方に御縁をお持ちでしょうか?

>『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』
Wikipediaで内容を確認しました。
社会問題に関する時勢を詠んだ詩として、興味深いですね。

>質問に答えていただき、ありがとうございました。
いえいえ、こちらこそいろいろ考えさせる・気づかしてくれる質問だったので、とても参考になりました。
インターネットの特性上、批判や疑問のコメントを投げやりに書くだけでほったらかしの人が多い中で、貴殿のようにちゃんとした意見や考えを述べながらも質問をし、それに対するお礼の返事を書く。
そうしたことを誠実になされているので、返答するこちらとしても大変嬉しく思います。

海外のセーフティネットは日本より手厚いのでしょうか?
特に北欧やフランス、ドイツが気になりますね。
合わせて不正受給問題も。

Re: タイトルなし

>>のびたろうさん
>海外のセーフティネットは日本より手厚いのでしょうか?
>特に北欧やフランス、ドイツが気になりますね。
海外のセーフティネットと言っても、各々のセーフティネットによって差はありますが、ヨーロッパ圏では手厚い国が多いですね。
有名なのがフィンランド・スウェーデン・デンマークなどの北欧ですね。
「ゆりかごから墓場まで」と言われるぐらいの、手厚い補償(教育費や医療費などの完全無料など)がマスコミなどでも紹介されています。
当ブログでも『消費税25%で世界一幸せな国 デンマークの暮らし』という、デンマークの高福祉社会について述べた本を紹介しています。
http://chageasfan.blog.fc2.com/blog-entry-111.html
読んでみると、「高福祉社会ってこんなに手厚いものなのか!」と驚くことばかりです。
ぜひ読んでみてください。

>合わせて不正受給問題も。
作家の橘玲さんが自身の著作物の中で、スウェーデンで起きている失業手当の不正受給について何度か取り上げています。
スウェーデンでは失業手当を給付しておきながら再就職しない者が出ているそうで、国は強制労働による法規制をかけたそうです。
高福祉社会であっても不正受給は起きてしまうようです。

No title

CHAGEAS-FANさんへ
残念ながら和歌山に縁はありません、南方熊楠は好きですが。どちらかといえば熊野、phaの「フルサトをつくる」に期待してます。

のびたろうさんへ
http://www.moyai.net/modules/d3blog/details.php?bid=1723
ぼくからはこのエントリをオススメしておきます。やや長い記事ですが、日本とフランスの社会保障の違い、雰囲気をつかむのにちょうどいいかと思います。

返事

CHAGEAS-FANさん
回答ありがとうございます。
欧州はセーフティネットが日本よりも手厚いのですね。
しかも、自立の概念が分かりやすいですね。

ぐすくまさん
フランスと日本ではホームレス事情も違うのですね。
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