ホリエモン(個人主義)と永守重信(集団主義)

 ライブドアの元経営者であるホリエモンこと堀江貴文さんは、自身のことを「ワーカホリック」と言うくらい、仕事が好きだという。現役時代は弁当に買いに行く時間ももったいなかったから、部下に頼んで弁当を買ってもらい、自身は仕事に専念したという。離職した現在でも、働きたいという気持ちは変わっていないそうだ。

 一方、「休みたいなら舐めればいい」という発言で一時期問題になった日本電産の永守重信社長は(ただし、この発言にはマスコミの創作がからんでいるとの噂も)、毎日誰よりも早く出勤し、1日16時間働き、お正月の午前中以外休まないという、絵にかいたようなハードワーカーだ。彼自身も働くことに関しては、まったく苦になっていないようだ。

 2人とも働くことに対して物凄く意欲的な人々だ。ところで、今回なぜこの2人のハードワーカーを話題として出したかというと、彼らのハードワークに対する意識に注目していると、2人のスタンスがけっこう違っていると気づいたからだ。その意識は2人の何かしらの主義・主張に色濃く出ている。


 ホリエモンはベーシックインカムの支持者で、自身のブログや書籍でベーシックインカムの有用性を述べている。その際よく彼が口にするのは、

「みんながみんな働く必要はない」
「働きたい人にジャンジャン働いてもらえればいい」

 上記の発言から分かるのは、要するに「やりたい人だけやればいい」「みんなが同じことをする必要は無い」という個人主義のスタンスだ。こちらのサイトに彼へのインタビューが載っているが、そのスタンスをよく表している発言が↓。

僕は無理に人の考え方を変えたいと思わないほうなので、わかる奴だけ周りに集まればいいと思ってる。司法対策という意味で、事実無根の噂を流されたような ときは徹底的に説明するようになりましたが、「僕はこう思うけど、君はどう思ったっていいんだよ」という気持ちは変わらないです。
 <プレジデントロイター2011年3.7号より>


 ホリエモンは意外に若い人の間で人気があると聞く。↑のようなスタンスが意外と若い人に受けるのかもしれない(私自身もこうしたスタンスが好きだ)。


 では、永守社長はどうだろう。私は彼の本を読んだことが無いので思想などの詳しいことは分からないが、彼が以前書いたWEBマガジンが日本電産の公式サイトでアップされているので、そちらを参考にする。

 彼がこれまで書いてきたWEBマガジンなどをみると、自己流の仕事方法など「自分がどう動くか(働くか)」よりも、人材育成など「社員をどう動かすか(働かせるか)」といった社員や部下に関する話題が多いように思える。↓は彼が書いたWEBマガジンの一文。

 ちっぽけな会社だったから、どうしたら、まず人が集まってくれるか?そして人が集まったら、どういう基準を設けて採用したらよいのか?さらに、採用した人間をどのように教育すれば、優秀な人材として育っていくのか?
 とにかく私は、この十年間、さまざまな形で試行錯誤を重ねた。重ねたといっても、今後もこの試行錯誤を続けていくつもりであるが、ようやくそのベースとなるものは出来あがった。
 その方法が極めてユニークであったがために、マスコミでもしばしば取り上げられることになった。当然のことながら、大成功であった方法もあれば、失敗したものもある。
 <WEBマガジン vol.8「永守式人材育成法の原点」


 会社を大きくしていく際、「みんながみんな会社を引っ張っていかないと上手くいかない」と考えるのは、経営者として当たり前のことだが、彼が考えた「ユニーク」な方法は、かなりの徹底ぶりが伺える(WEBマガジンで公表されているのは、「早飯試験」や「トイレ掃除試験」など)。

 また、永守社長は社員と上手く仕事ができるよう、社員のプライベートも把握している。プライベートの把握まで行うとなると、だんだん人間関係もかなり濃くなるだろうから、集団主義の意識もかなり根強くなる。かなりムラ社会の色合いが強いのだろう。

 こうなると、ホリエモンのように「やりたい人だけやればいい」という考え方は好ましくない。ホリエモンも経営者の頃は働いてくれる従業員に対して、何らかの人材育成法はあったかもしれないが、永守社長と比べるとそれほど窮屈なものではなかっただろう。


 この2人のスタンスの違いは、世代間による意識の差が出ていて、実に面白い。ホリエモンを含む若い衆は個人主義を主張し、永森社長を含む年長者衆は集団主義を好む。この2人を見ていると、まるで若者と年長者とによる世代層の縮図を見ているように感じる。

 ただ、誤解しないように言うと、年長者が集団主義を好むからといって「日本人は昔から集団主義を好む」というわけではない。橘玲さんが唱える「日本人はアメリカ人よりも個人主義だ」という指摘もあるので、必ずしも日本人全員が集団意識を好む傾向があるわけではないのだ。

 これからの日本人の意識は、ホリエモン(若者)のような個人主義が台頭するか、永森社長(年長者)のような集団主義が根強く残るか。両者の駆け引きに注目してみたい。


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